通信から人材、そして未来へ -事業拡大の軌跡-

通信から人材、そして未来へ-事業拡大の歩み-

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日本のコールセンター改革を提案

 現在、国内向けの通信事業として大きく2本の柱を準備しています。
ひとつは、コールセンター向けの新たなCTIソリューション提供*。インドで開発されたテキスト対応型のシステムを日本語版にローカリゼーションし、それを国内コールセンター向けに販売するという事業です。
*CTI(Computer Telephony Integration System:電話とコンピュータの統合システム)
 アイ・ピー・エスが多くの事業を展開するフィリピンは、インドと並ぶ世界的なコールセンター拠点として知られています。これは比・印両国が英語圏のお客様からの問い合わせに的確な対応を可能としているためで、自然とコールセンター関連の技術・システムも両国が発展を支えてきました。
 そして現在、コールセンターは「コンタクトセンター」に変わりつつあります。音声でのやりとりを主としてきた従来と異なり、テキストベースでのチャット対応化が進みはじめているのです。
 通信業界全体で見ても、音声対話の衰退は一気に進んでおり、音声トラフィックも下がり続けています。特に若い世代においては、スマホを音声対話ツールとしてではなく、文字、画面上の世界で完了させるツールとして使うことが多いのはご承知のとおりです。
 一方、企業側の設備整備面から見ても、音声対応ならば100台は必要な通信端末が、テキスト対応ならば20台程度で済みます。当然、音声対応に伴う電話料金もコスト的には莫大で、年間1000~2000万円近くを支出しているケースも少なくありません。こうしたコスト圧縮の観点からも、テキスト対応は有益に働くことになるでしょう。

SNSを活用したCTIソリューション

では、具体的にはどのようなソリューションを提供していくのか。LINEやViberと互換性のあるCTIを提供し、SNSのオフィシャルアカウントを活用した「チャット型コールセンター(コンタクトセンター)」を実現しようというのが我々の提案です。
SNSの活用と聞いて、高齢者のお客様への対応を懸念される方もおられるでしょう。LINEなどのサービスは若者向けと思われがちですが、実際には60~70歳代の方でも利用されるケースが増えてきています。家族とのやりとりにおいて利用を開始し、その後は友人同士のコミュニケーションツールとして使う方が増えているのです。
テキスト対応の導入による、ある種カジュアルなやりとりが定着することは、商品売買を含めたビジネス全体において好影響をもたらす可能性を秘めています。もちろん、オフィシャルアカウントとしてお客様とのやりとりがデータベース化されることで、製品開発やマーケティングにおいてより活用しやすい情報を収集することにもつながります。
テキスト対応化が進むことで、いずれは本格的なAIの採用によるシステムの効率化を図ることが可能となりますが、オペレーターの仕事が完全になくなるわけではありません。複雑な質問やAIの回答にご納得いただけない方からの問い合わせなど、テキスト上においてもオペレーター対応が必須なケースは残ります。
そうしたケースにおいて、新たに課金できる仕組みも取り入れることができます。AIを活用したテキスト対応で安価にサポートサービスを提供しつつ、一定以上のサポートについては別途課金を伴う形でサービスを提供する。これもまた、我々が提案する「コンタクトセンター」の新たな形のひとつです。
我々が実現したいのは、コールセンターからコンタクトセンターへのダイナミックな変革を実現しつつ、ビッグデータのプロモーション活用などの付加価値を生み出し、ビジネスとしてより有益となるソリューションの提供。コールセンター大国・フィリピンでの知見と経験を活かし、よりよいソリューションを日本のお客様へと提供することができれば、と考えています。

音声対話を効率的に利用するために

世界的な潮流でもあるコールセンターのテキスト対応化が進んだとしても、音声対話が完全になくなるわけではありません。
そこで我々が提案するもうひとつの柱が「より安価な『0120』の提供」です。
現在、固定回線における「0120」の利用は、依然として3分課金となっています。つまり、1秒でも3分相当のコストがかかり、3分1秒であれば6分課金されるということ。コールセンターを運営する企業にとって、コスト面から良い仕組みとはなっていません。
一方、従前の区分では第一種電気通信事業者にあたる我々は、秒課金で「0120」を利用することができます。そして、この番号を皆様に提供する、というのが我々の考える事業です。
いわばMVNOと似たような構造のビジネスで、「0120」を利用するにあたり、名義上は我々の契約をお貸しする、という形。コスト的には2割から3割程度の削減が見込めます。
もちろん、先に示したCTIソリューション提供に力を注いでいくことになりますが、こうした従来サービスに対する利便性をご提供することもまた、我々の使命のひとつと考えて取り組んでいく考えです。

スタートは国際電話の代理店事業から

今日、アイ・ピー・エスはさまざまな事業に取り組んでいますが、それぞれに取り組んだきっかけはいずれも、その時々におけるニーズを的確に把握し、一歩先を行くサービスを提供しようと努力した結果です。
国際電話の代理店事業において在日フィリピン人の方々をターゲットとしたのは、当時、そこに大きな市場が広がっているとともに、祖国へ電話をかけるサービスを求める声が多かったため。そして、誰もそうした現状に踏み込んでいかなかったためです。
出入国の多い外国人個人を対象としたビジネスは利用料金の回収が困難で、その役割を担う代理店にとっては厳しい状況にありました。そこで我々は、国際電話のプリペイドカードをフィリピン人女性の方々に提供するという、ニーズを満たしつつ回収業務を安定させるビジネスを展開したのです。
その後、競争環境の中で国際電話の価格が低下してくると、今度はフィリピンにコールセンターを設置し、専用線で日本とつなぐことでよりよいサービスを提供できる体制を整えました。この際、営業部隊や技術部隊をフィリピンに置き、会社としての拠点を築いたことが後々、InfiniVANなどの事業へと活きていくことになります。

新たな道を開いた人材派遣業

国際電話サービスを通じて、日本を訪れるフィリピン人の方と多くの接点を持った我々は、彼ら彼女らをサポートするための生活商材を提供するビジネスを立ち上げました。
中でも皆さんに喜ばれ、ビジネスとしても大きく発展したのが人材派遣ビジネスです。
20歳代前半で日本を訪れ、こちらで仕事をしながら日本人と結婚しても、いずれ離婚してシングルマザーとなり、苦しい生活を強いられるフィリピン人女性が多く生まれてしまったのはご承知のとおりです。
一方、主に飲食業などで採用されてきた彼女らが年齢を重ね、新たな職を日本で探そうとしても、簡単には見つからないという現状がありました。
そこで我々が着目したのが「介護・看護」。日本政府からも高齢化社会到来に伴う介護士不足を懸念する声があり、そうした両者のニーズを我々がマッチングしたわけです。
仕事を得た在日フィリピン人の皆さんは、さらに我々の提供する生活商材などを購入する機会も増え、ビジネスとして大きく軌道に乗りました。
最近では介護・看護にとどまらず、ファミリーレストランやコンビニエンスストアなど幅広い業界へ人材派遣のマッチングを行っています。

美容ビジネスをフィリピンへ「輸出」

在日フィリピン人の方々に仕事を提供したことで生活商材販売ビジネスも飛躍したわけですが、生活が安定して余裕が生まれてくると、求められる製品・サービスの幅も広がっていきます。
そうした中で求められ始めたのが、美白、アンチエイジングといった化粧品関連。日本で暮らし、日本の学校にお子様を通わせている方々が「より日本人に近いルックス」への欲求を高めたようです。結果、このビジネスが爆発的にヒットしました。
加えて、国際電話事業展開においてフィリピン国内に拠点を置いたことから、この化粧品ビジネスをフィリピンでも展開してみよう、と考えはじめました。
フィリピンで本格的に商売を始める以上、製品に対する一定以上の信頼は必要。そこで、日本国内の大手美容ビジネス事業者である品川美容外科と連携し、現地での美容製品販売に乗り出しました。
また、当時のフィリピン国内はテレビゲームの人気が高まっていたことを踏まえ、視力矯正手術についても用意しました。美容とレーシックという柱は現地でも深く受け入れられ、我々はフィリピン国内での事業への地盤をさらに固めることができたのです。

フィリピン国内向け通信事業の開始

フィリピン国内での美容・レーシックビジネス展開の成功を受けて、我々にとって本業である通信においてもフィリピン国内でフィリピン人向けの事業を行うことを考えました。
とはいえ、いかに第一種国際通信事業者である我々でも、他国において提供できる通信サービスは極めて限定的です。
一方、フィリピンではテレビ放送に日本のISDB-T規格が採用され、ケーブルテレビ局のHog化が進むなど、日本の通信事業者としてはビジネス展開がしやすい状況が整いつつありました。
そこで我々は、現地の通信事業者と提携し、その事業者が持っていたネットワークを光へとアップグレード。その回線をケーブルテレビ事業者に提供するビジネスを開始しました。
フィリピン国内の規制では、海外通信事業者が回線をひけるのはハブまでで、ハブから先へつなぐためには国内通信事業者を利用しなければなりません。その点、我々が提携した通信事業者はポケットベル事業などを手掛けており、光化によってネット回線を提供できる環境をすぐに整えることができました。
この事業はサービス面、価格面ともフィリピン国内でも大きなインパクトを与え、現在へとつながる足がかりを作ることに成功しました。

そしてInfiniVAN設立へ

ケーブルテレビ事業者へのネット回線提供ビジネスが当たり、フィリピン国内での通信事業展開に自信を強める中で、新たに法人向けサービスの提供にも着目します。
これはフィリピン国内での通信事業における構造的な特長でもありますが、家庭・個人向けサービスを主とするケーブルテレビ事業と比較して、法人向けマーケットは大規模です。サービス的な違いがさほどなくとも、価格帯として個人向け家庭向けは法人向けと比べて安価に抑えられているためです。
法人向けインターネットサービスを提供するためには特別な認可が必要で、もちろん、日本企業として実現することはできません。そこで現地の方々を多く雇用しつつ、我々の技術とサービスをフィリピン国内で提供できる現地法人・InfiniVANを設立しました。

10%シェア確保で展望がひらける

InfiniVANは全フィリピンで有線無線すべての通信事業を展開できる事業者ですが、現地の最大手事業者とくらべれば資本規模は1/100程度の小さな事業者です。
当面の目標としているのは、日本の丸の内地域に相当するフィリピンの首都・マニラのマカティアベニューにおいて、約10%のシェアを獲得することとなります。
マカティアベニューには110のビル、5500社の企業がひしめいており、フィリピン国内における超一流の商業通りと言われています。私自身が得た成功体験を踏まえると、そこで10%のシェアを獲得できれば、それが大きなフックとなって事業は軌道に乗ります。
現状、このままいけば来年3月にも10%に到達する見込みで、順調に成長していくための展望が拓けたと考えています。もちろん、これから現地の大手通信事業者などとの競合関係が厳しくなってくるものと予想されますが、ケーブルテレビ向けネット回線提供の際に得た「闘争」の経験、また現地法人としてサービスを提供するなど準備もきっちり進めてきましたので、あくまで正当に、技術・サービスで勝負していく考えです。

日本のIPトランジット有効活用を

日本とフィリピンを中心として、国際的に通信を中心としたさまざまな事業を手掛けてきたアイ・ピー・エスですが、やはり日本企業として、通信事業における日本の発展を常に考えています。
現在、私が懸念事項と捉えているのは、日本のIPトランジットの活用です。
アジア太平洋地域におけるケーブルは基本、日本からシンガポールへの回線を基幹とし、そこからブランチングユニットで各基幹がつながっているというのがほとんど。ただし、IPトランジットに関しては、フィリピンもインドネシアもマレーシアもほとんどが香港とシンガポールを利用しており、やりとりもこの二国間で行われています。
こうした現象が起きているのは、ひとえに日本のIPトランジット利用にかかるコストが高いため。利用シーンは日本経由でアメリカへ運ぶというケースだけで、このままではせっかくのケーブルがほとんど利活用されません。
IPトランジットの大切さを国家レベルで認識し、外国キャリアが利用しやすい環境を整備しなければ、20年後のネットワークから日本が事実上蚊帳の外となってしまうかもしれません。こうした現状を把握し、何らかの対策を打つことを強く求めます。

市場に求められるサービスを提供してこそ

 インフラ設備と密接な関係にある通信事業は、一定以上の設備投資が求められる難しい事業です。だからこそ我々は様々な事業を展開しつつ、自前でのインフラ敷設にこだわりすぎず、あくまで柔軟にネットワーク共有を含めたインフラ整備を進めてきました。
 その最大の目的は「マーケットに必要なサービスを提供すること」。在日フィリピン人への国際電話プリペイドカード提供にはじまり、フィリピン国内でのインターネットサービス提供を実現するInfiniVAN設立へとつながる最大のモチベーションは、多くの方に喜んでいただけるサービスを提供し続けることでした。
 現在、日本ではIPOを目指して活動しています。これは、インフラ事業の常として国家の支援やファンドを頼るのではなく、あくまで民間企業としてユーザが求めるサービスを提供し続けるという我々の姿勢を顕すものです。
 だからこそ、同じ商品を同じように販売する事業ではなく、プレイヤーの少ない領域で、買い手となる皆さんを驚かせるような製品・サービスを提供していきたい。もちろん、常に困難を伴う事業スタイルですが、簡単に成功する事業などないという前提を持ちつつ、事業を軌道に乗せるために苦難を乗り越えていくこと、そこにしっかり時間をかけて社を成長させていくことこそ、我々に与えられたミッションと考えています。
 実際、これまでも多くの苦難や壁に当たりましたが、そこを工夫しながら乗り越えることで差別化が生まれ、事業を成功へと導くことができました。
 もうひとつ、壁という点では「難しい」とされることにあえて挑戦することも我々の姿勢です。在日フィリピン人女性への職場提供など、問題として世間的に認識されつつも誰も手を出さなかった事業に取り組み、それを軌道に乗せる。
 前段で指摘した日本のIPトランジット活用も含め、いずれは誰かが乗り出し、なんらかの対策が打たれるのかもしれません。その「いずれ」を前倒しすること、これも我々の役割のひとつであると考えています。